381系誕生秘話~part6~

本日のブログは前回の『381系誕生秘話~part5~』の続きです。

「新幹線接続路線導入派VS.在来線の幹線導入派~その1~」

前回の『381系誕生秘話 ~part5~』で、1968年6月の列車速度調査委員会が打ち出した振子式システムを搭載した新たな速度設定の内容を紹介しましたが、この時点で国鉄内部は新幹線接続路線導入派と在来線の幹線導入派に分かれていたようです。

新幹線接続路線導入派は新幹線と接続する路線に振子式特急を走らせ、新幹線の速達性を生かすというもので、線路等級が3級線(乙線)で曲線半径が400m以下の路線であっても曲線制限速度のアップが見込めるというもの。

一方、在来線の幹線導入派は新幹線未開通の在来線幹線のスピードアップと輸送力の安定に主眼を置いたもので、線路等級が1級線(特甲線)、及び2級線(甲線)、曲線半径が400m以上の幹線と、新幹線接続路線導入派が求めるスペックとは基本的に異なります。

さて、完成した振子式試験車両はシリコン整流器式の交直両用で車内にはトイレ、冷水器が完備され、窓際には簡易リクライニングシート、側面には電動行先表示器が設置されていました。床下には冷房機、汚水処理装置、水タンクが搭載され、形式名も試験車両特有のものではなく、営業車に準拠した591系とこのまま量産車に移行できる完成度でした。

そして、1970年から1972年までの期間でおよそ10回に亘る試験走行を実施し、その内の半数以上が東北本線で行われました。この事から当初591系は在来線の幹線導入派寄りの存在だったように思えます。おそらくこの時点での「ひばり」の振り子電車化が大きくクローズアップされたのでしょう。その後も続けられた試験結果も極めて良好に終わりましたが、筆者はこの良好な走行結果は過去に積み上げてきた台車開発の賜物だと捉えています。

高速運転時に於いて一番の障害になるのが台車の蛇行動です。国鉄では初の110km/h運転を可能にする151系の開発においてこの台車の蛇行動と戦ってきました。151系では空気ばねとボルスタアンカーで縦方向からの蛇行動を緩和するDT23・TR58を完成させ、その6年後には縦方向だけでなく、横方向からの蛇行動を緩和させるDT32・TR69を。そして、その技術は0系新幹線に採用された台車DT200で200km/h以上での高速運転にもかかわらず、蛇行動を抑えることにも成功しました。

1973年に量産化された世界初の振子電車の381系に採用されたDT42・TR224はそれまで線路等級が低い路線では活かせなかった高速性や安定性までもを補った新たな発想の台車だったのでした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。つづきます。

  • URLをコピーしました!
目次